「海南麺麭」ロティムア

「海南麺麭」ロティムアは添加物・合成保存料ゼロ!

マレーシアで販売されているロティ(パン)の種類にも特筆すべき逸品があります。それは、マラッカから南に1時間ほどドライブした所にあるジョホール州の「ムア」(Muar)という町で作られている気品あふれる香りと食感を兼ねそなえた「ロティ・ムア」というパンです。

最初に友人宅でこのパンを食べたとき「美味い!香りがGoo!適度な食感、メチャウマ!」で、驚きました。製造している町の名前が付けられた「ロティ・ムア」は中国海南(ハイナム、もしくはハイナン)地域出身の祖先をもつ移民の子孫が作っているのでマラッカのローカルチャイニーズは「ロティ・ハイナム」と称しています。

青カビの攻撃を受けやすいデリケートな食パン

マレーシアのスーパーで売られているビニールに入った大手メーカーが作る食パンは、不思議なことに常温で保存し賞味期限を過ぎても4~5日カビが付着しません。赤道にほど近い熱帯雨林気候ですぞ!高温多湿でカビなどの菌類の生育にはもっとも適した環境なのに・・・おかしいですね。

でも、このロティ・ムアは冷蔵庫で保管しない限り2日目には青カビの攻撃をモロに受けてしまいます。筆者も最初は「賞味期限ギリギリの売れ残りをつかまされた!」と少々憤慨しました。2度目も、買ってきたロティ・ムアをテーブルの上に置いていたら同じく青カビのアタックを受けてしましました。

グルメで食通、その批評の論達者なローカルの友人Mr.ピーターにその訳を尋ねてみました。「Tony、ロティ・ムアには添加物や合成保存料が一切使われていないんだよ。だから冷蔵庫で保管(1週間程度)するか冷凍庫で保存(1ヶ月程度)しないとダメだよ」と教えてくれました。

なるほど、納得。パン本来の自然な香り、食感、テイストは合成保存料を使っていない証拠。この食パンに出会ったのは、2001年頃。当時、マラッカの街でロティ・ムアを扱っている商店はほとんどありませんでした。口コミ情報を頼りに「火曜の夜、あの街のパサマラム(夜店)でロティ・ムアを見かけた」と聞いてはそこへ向かいゲットするしか手に入いらない稀少品だったのです。

パンを買うために往復2時間のドライブ

筆者の探求心に火がつきました。このロティムアの故郷を訪問してみたい。ジョホール州の「ムアに行けば、苦労せずに買えるハズだ!」というのが決断の理由だったのです。マラッカの街の中心地から南へ向かう国道を制限速度で車を走らせて45分。ジョホールとの州境の小川を渡ってひたすら直進。途中、三叉路を右に曲がるのを間違わなければムアの町にたどり着けます。

大河「ムア川」を渡るムア大橋を渡るといきなり一方通行です。流れに逆らわず左折し、一本目のT字路を右折。そしてすぐ一本目を右折して途中の交差点を4~5つ直進するとT字路にぶつかります。右折(最初に訪問した2001年には右左折できましたが、最近は交通量が増え左折しかできません)してラーンナバウト(円形の交差点)を9時の方向に抜けます。最初のT字路を左折して適当な場所に車を止めるといきなりロティムアの屋台に出会えます。

追記:2009年に開通した無料で通行できるAMJ(アローガジャ・マラッカ・ジャシン)ハイウエーを使えばマラッカから30分でたどり着けます。マラッカセントラルバスターミナルからムア行きのバスも運行されています。

最初に見つけたときには、狂喜乱舞しまとめ買いをしましたが、しばらくして落ち着いて町を見渡すといたるところで、ロティ・ムアが「これでもか~!」って感じで売られています。すごい数の屋台があります。

話はそれますが、GoogleMapでムアの街を見ると「ムアル」と書かれています。英語でのスペルは"Muar"ですからRを「ル」と発音してらっしゃるのでしょうが、地元では「ムア」と呼んでいます。マラッカの地名も"Melaka"と綴られているので「ムラカ」と書かれていますが、「マラッカ」が正解です。

目にもとまらぬ職人芸が生み出すロティ・ムア

ムアには年に2~3回、仕事でもないのに足を踏み入れています。オタオタ(焼きカマボコ)とか、叉焼飯(チャーシューと汁をのせたご飯)、ツバメの巣のドリンク、レモンジュース、最近見つけた小龍包(小さい肉まん)などが安くてとっても美味いので食べ歩きしています。マラッカ海峡にムア川が流れ込む河口公園では、しつけされて行儀の良い野生の猿と遊ぶこともできます。

説明を忘れていましたが、ロティムアには食パンの耳(ミミ)がありません。茶色のミミの部分はキレイにカットされているのです。マレーシアのスーパーで手に入る食パンは、日本の食パンとほぼ同じ。立方体でカットされたミミのついたタイプです。

ロティ・ムアは断面を見ると細長くていびつな形状、それに厚さは1.5センチほどある厚切りトーストタイプなのです。このロティムアがいかに加工されるか?その決定的瞬間をカメラに収めてきましたのでご覧下さい。

職人さんの秘技(撮影協力:元マラッカ住人Asamiさん)