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この新コーナー「マラッカ名店紹介シリーズ」を企画したのは3日前の昼下がり、マラッカのとあるカフェで旅人の忘れ物らしき日本の旅のガイドブック「◎◎△△」を読んだことがきっかけです。3センチ近くある分厚い旅行ガイドブックです。02〜03年版と書いてありますから、たぶん2年前の出版物だと思います。

ペラペラめくっているとなるほど納得できるマレーシアを旅するノウハウがぎっしりつまっています。しかし・・・地図を見てガッカリ。私が優れモノの地図「マレーシアのロードマップ」で既に紹介済みの見分け方をチェックすると見事に1998年以前の地図を2002〜03年版で使用していました。

さっそく、地域別編集の扉を探し「マラッカ」のコーナーをチェックしました。書いてあることにケチをつけたくありませんが、信頼できる(私が納得できるという意味)情報は50%以下でした。むかし読んで好きになって今でも旅先に携帯している沢木耕太郎さんの著した「深夜特急」の表現をお借りします。
『わかっていることは、わからないということだけ』
 そうだ、あれはタイでのことだった。ソンクラーのホテルでバンコクに駐在する日本人の夫妻と出会い、一晩バーで酒を飲んだことがあった。
 とりわけご主人はタイについて詳しく、私が抱いていたタイやタイ人についての疑問に納得のいく答えをいくつも提出してくれたものだった。
 ところが、夫妻が披露してくれたタイ式一口噺(ひとくちばなし)にひとしきり笑ったあとで、ご主人が真顔になって言ったのだ。

「しかし、外国というのはわからないですね」
 私にはその言葉は意外だった。彼がどういう種類の仕事をしているかはあえて訊ねなかったが、それまでの断片的な話によってさえ、タイの政治と経済について深い知識を持っていることは歴然としていたからだ。

「外国ってわからない」
 ご主人が独り言のように繰り返し、さらにこうつけ加えたのだ。
「ほんとうにわかっているのは、わからないということだけかもしれないな」
「でも、さっきからいろいろな話をうかがっているうちに、タイという国が少しずつわかってきたような気がしましたけどね」
 私が言うと彼は苦笑して言った。
「いや、ああいったことぐらいで一つの国をわかったように思うのは危険だよ」
 それはそうだろうが、と私が反論しかけると、ご主人はそれを制して続けた。
「状況はどんどん変化して行くし、データなんかは一年で古びてしまう。それに経験というやつは常に一面的だしね」

 確かに、それはそうだ。

「知らなければ知らないでいいんだよね。自分が知らないということを知っているから、必要なら一から調べてみようとするだろう。でも、中途半端に知っていると、それにとらわれてとんでもない結論を引き出しかねないんだな」

 そういうことはあるかもしれませんね、と私は相槌を打った。

「どんなにその国に永くいても、自分にはよくわからないと思っている人の方が、結局誤らない」
 なるほど、と思った。日本にも、外国にしばらく滞在しただけでその国すべてがわかったようなことを喋ったり、書いたりする人がいる。それがどれほどのものかは、日本に短期間いた外国人が、自国に持ち帰って喋ったり書いたりした日本論がどこか的はずれなのを見ればわかる。日本人の異国論だけがその弊を免れているなどという保障はないのだ。わかっていることは、わからないということだけ、という彼の言葉は新鮮に響いた。
沢木耕太郎「深夜特急」南ヨーロッパ編 第十七章果ての岬より
夕陽
私が読んだガイドブック、それも信頼度50%しかなかった。マラッカ情報の項目の記事を書いたライターさんは、実際にマラッカに滞在して取材されたはずですが長期にわたってココに住まれた方ではないはずです。前年度出版のデータや、ライバル旅行情報誌の取り上げているレストラン、店やホテルを取材先に選んで、駆け足でチェックして次の町に移動して行ったのではないでしょうか。

間違った情報とは言いませんが、たった一晩マラッカに泊まったという「旅人のコメント」(読者投稿)を例に上げてお話ししましょう。「センターポイントというホーカーズがオススメです。午後9時半には店を閉めるのでお早めに!」と記事になっていました。読んだときおもわず吹き出しました。

な〜るほど、あのセンターポイントに日本人が多いのはそういうコトかと理由がわかったからです。日本を代表する旅人のバイブル「◎◎△△」に取り上げられているから、日本人客が多いんだなぁ・・・

さて、ナニがおかしくて笑ってしまったのか説明しておきましょう。

センターポイントは1998年頃は良い味の屋台が集まるホーカーズセンター(屋台村)でしたが、マラッカラヤの北側に大きな屋台村が駐車場完備でオープンして、繁盛していた屋台はそちらへ引っ越してしまいました。マイカー所有率が増えてきて、駐車場を確保していない屋台村はセンターポイントをはじめ、さびれてきています。ローカルの人たちはセンターポイントには食事に利用する人は極端に減りました。

センターポイントの向かって左側にある昔からのオープンレストランには毎日ローカルの食通(グルメ)が押しかけていますが、肝心のセンターポイントはビヤガーデンに変わってしまいました。怪しげなドレスをまとったお姉さんがケバイ化粧してステージでスポットライトを浴びカラオケを歌い、場内の照明を暗くしてビールを飲ませるスペースに替わったのです。

このビヤガーデンの開店時間は午後9時〜10時です。真夜中午前0時頃がいちばんのピーク。深夜1時に閉店ですが、週末は3時頃までにぎわっています。この旅行者の方の投稿記事は、ビヤガーデンが始まるまで数軒の屋台が料理を出すテーブルをキレイに片付けているのを見て『ホーカーズの閉店』と勘違いしたのでしょう。実は、ビヤガーデンの開店準備だったことも知らずに・・・

私のお気に入りのワンタンミー(雲呑麺)もローカルの友人に「どこの屋台が一番美味しい?」と質問すると10人が10通りの答えを出してくれます。中には同じ店を答える人もいますが、ほとんど皆さん自分だけのお気に入りのお店をお持ちのようです。実際に行って食べてみると納得できる名店もあれば、私には向かない店もあります。ワンタンミー屋さんだけでも50軒は食べ歩きました。マラッカ「ワンタンミー」トップ3を上げることはできてもマラッカ「ナンバーワン」を絞り込むのは勇気の要ることです。

オススメできるワンタンミー屋さんを絞り込むのにもこれだけ時間がかかるというのに、マラッカの観光名所からホテル宿泊情報、レストラン情報、屋台の情報を本にまとめる取材記者さんたちは数泊でみんな情報収集してこなさなきゃならない時間的な制約を考えると、しかたのないことなのかもしれません。旅の情報誌に掲載されている店情報が毎年同じ顔ぶれで、ライバル紙にも同じ店が載っているコトも含めて・・・。

マラッカにはニョニャ料理専門のお店もざっと数えて10軒あります。中華レストランの名店にいたっては20軒以上あります。しかし、旅行ガイドブックを携えた日本人観光客が押しかけるのはたった1〜2軒。ガイドブックに載っているからというそれだけの理由で選ばれている?ことに疑問を感じました。

マラッカは、KLやお隣のシンガポールに比べて交通アクセスが悪く、アジア旅の目的地としては近くて遠い場所です。せっかく、いらっしゃったのならせめて地元の人が「ココは美味しいぞ」とか「コレを食べなきゃマラッカに来たとは言わせんゾ!」という名店をご紹介することがマラッカガイド(当サイト)の使命であると思いこの新コーナーを立ち上げました。

最後になりましたが、飲食店やおみやげ屋さんは毎年新規開店した数だ閉店したり、オーナーが替わってメニューや内容が変わっています。「◎◎△△」という旅人のバイブルに載っている「ハーパース」という西洋料理店も2004年6月末日にオーナーが替わり、営業方針が変わりました。場所も看板も同じですが料理の素材や、従業員の接客サービスが格段に落ちました。

他に、出版された年度の02年には閉店済みのカフェ(1999年閉店)も紹介されていました。飲食店のデータを年刊形式の出版物に期待するのが間違いなのかもしれません。しかし支持者の多い旅行ガイドの版元の責任として自前のwebサイトで「◎◎年版本誌の?ページに掲載した△△レストランは閉店しています」というぐらいの記事のフォローシステムを用意したほうが良いのでは?

「◎◎△△」に書かれていた、マレーシアの旅の情報はコンパクトにまとめられていて信頼度の高い情報誌だと思います。歴史やマレー語の解説、旅の実用情報などなどマジで日本一の旅人のバイブルとして通用する優れモノでした。しかし、ことマラッカのコーナーについては、首をかしげるばかりでした。最新版を読んだわけではなく02〜03年度版でしたから情報が古かったのかも知れません。(フォローしたつもりです)

私は、マラッカを生活の拠点にしていますがココでは外国人です。現地に溶け込んで生活しているつもりですが、周りの人は「Tonyは日本人だ!」と少なからず線を引いています。生まれ育った日本のことすら徹底解説できないくせに「マレーシアやマラッカを語ってんじゃねぇぞ!」という意味のお叱りをいただくこともあります。反論できない壁にぶち当たることもあります。

しかし、私はマラッカの街を旅してくださる日本人旅行者の方々に、マラッカの活きた情報を届けることができる環境に暮らしています。筆者の独断ときつい主観の入った情報ですが、広告料や友人の情けで宣伝しているわけではありません。これをどう生かすかは使われるあなた次第です。
Tony's Net管理人 Tony 2004年7月9日

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