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カットされている金属板は純銀製の板。コンパスで描いたトレース線にしたがってハサミで切ります
「カンカン・キンキン」と規則正しいリズムに乗った金属音が響いてきた方向をたどって発見した宗教の法具を製作している銀&銅細工の工房を訪ねました。工房の場所はカトマンズのスワヤンブナートの正面入り口に向かって右へ約500メートル。

一番偉そうにしている職人の親方さんに「写真撮っても良いですか?」と聞いたら快諾してくれました。上の写真、オヤジさんが切断しているのは「銀」の板です。ハサミで切れるんですね、驚きました。
カンカン・チンチンと規則正しい音で銅版を鍛造しながらカタチにしていく職人さん
カンカン・キンキンという規則正しく響く音の主は、銅を叩いて鍛造中の職人さんでした。この銅製の飾り物は、ストゥーパ(仏塔)の天頂にあるポールの先端に取り付けるモノだそうです。この法具の名前を聞いてみましたが「コレは、あの先っぽに取り付ける金具」とストゥーパを指してくれるだけでした。鉄板を叩き出して、飾りを浮き出させる根気のいる作業です。このサイズでも制作期間は1週間かかるそうです。
硬質樹脂をに埋め込んだ円形にくり抜いた銅板(「マニ車」の上ぶた)を彫金している職人さん
マントラと呼ばれる仏教の経典を書きこんだ紙片の入っている「マニ車」。例えが悪いですが「マニ車」の見た目は、赤ちゃんをあやす「ガラガラ」に似ています。観光客用にお土産として、大量生産もされあちこちで見かけますがこの工房で作っているのは寺院から直接、オーダーメイトで注文を受けた、ホンモノです。

根元の棒を持ってクルクルと回転させて宗教儀式に用います。一回転させればお経を一回唱えたのと同じ効能があるとされているありがたい仏教の法具のひとつです。上の写真は、円筒形の本体パーツの上ぶたと、底板を彫金している制作工程です。近くによって確かめましたが細かい模様が規則正しく浮き出されていましたが、デザインは職人さんのアタマの中に入っているらしく銅版には下書きすら見あたりませんでした。
2枚のただの金属板(純銀製)が職人さんの手にかかると芸術品に早変わり
純銀製のとんがり帽子の正体は「マニ車」の上ぶたのトップに飾り付けられる装飾品でした。使う材料は、上の写真左側に見えている純銀製の2枚の金属板のみ。接着剤もプレス機もモールド(型)使いません。2枚の金属板が職人さんの手によって、キンキン・カンカンとたたき出されて右側の立派な「マニ車」トップ飾りに変身するのです。コレはアッパレというしかないですね。手作業というより、神ワザと評価したい。
純銀製の板をバーナーの火で加熱し曲げてから叩いて伸ばして下準備完了なり!
ネパールに短期間滞在中、手作り工房を見かけたらカメラを片手に「写真撮ってもイイですか?」と聞いて写真を撮りながら制作工程を取材させていただいてきました。事前に取材訪問を申し込んだ「タンカ」創作工房(第8章で紹介済み)以外は筆者が街を散策中、偶然見つけた道路沿いに何げなく作業場をオープンにしている工房ばかりでした。

振り返ってみると手作りハンドワークの原点には「祈り」があり、人々の信仰を支える宗教的な意味合いを持つモノばかりでした。これは筆者の主観です。伝統工芸というのは、流行り廃りのない継続的な需要がなければ伝承されず、やがてその「技」が忘れられてしまうのではないでしょうか?

日本の寺社建築も、歴史的価値の高い寺院や神社の大がかりな修復作業を行う事により「宮大工」さんをはじめ材木商、製材所はもちろん金具から工具まで昔から伝わる「技」が伝承されているといわれています。ヒンドゥー教と仏教が混在するネパールに暮らす人々の熱き「信仰心」が伝統工芸を支えているといえるのではないでしょうか?

古くから伝わる手作り製品の製法や加工方法は昔からの伝統が職人さんにより守られ、代々伝えられています。良くいえば伝統工芸「技」の伝承ですが、悪くいえば「生産性の上がらない」効率の悪い方法なのかもしれません。しかし効率が悪くても手作りの味は機械にマネのできる事ではないと思います。

車や飛行機はもちろん、電気も電話もない時代から人々の工夫により確立された「技」が、21世紀を迎えてケータイ電話やパソコンがごくあたりまえに個人の所有物になっている現在でも、そのままの作り方が継承されているネパールのハンドワーク工房。取材を通じて、永年的な需要と供給バランスを安定して造り出せるのは人々の熱き信仰心なんだなぁと実感しました。


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