カトマンズ市内中心にあるロイヤルパレス(現王宮)の正門に続く目抜き通りをブラブラ散歩していたら、ピンク色の可憐な花を発見。「あれっ?サクラじゃん」と思って近づいて、足場を見つけて木に登ってみました。
季節は、晩秋から冬に向かっている時期なのでサクラじゃないよな~と自問自答しながらしばらく観察してみました。花びらの数は「1・2・3・4・5枚ある」。枝を見てもサクラの木の樹皮に見えるし、新芽が出てきている葉っぱもサクラ餅を連想させるカタチだし「こりゃ、サクラに間違いない」と思いこみシャッターを切りました。
カメラをかついで木に登って、花に顔を近づけブツブツひとりごとを呟き、写真を撮っている筆者に冷たい地元の人たちの視線が突き刺さってきました。しかし、カンタンにはサクラから離れるわけにはいかない事情があるのです。筆者は日本を離れてもうすぐ6年になる放浪生活を送っています。
マラッカでは熱帯ジャングル気候のおかげでサクラの花が咲きません。春の訪れを告げるサクラの花を長いあいだ見ていないし、花を見ながら酒宴で盛り上がる「花見」もずいぶんごぶさたしています。ですから、遠く離れたネパールで思いもかけずサクラに出会えたのはメチャクチャうれしいことなのです。地元のヒトの困惑かえりみず、久々に巡りあえたサクラの花と樹を眺めていました。
地元のヒトに聞きましたが、このあたりの桜は毎年11月中頃に開花するそうです。ネパールで花を咲かせるサクラはこの一種類だけではなく何種類もあるそうで2月に開花するサクラもあるそうです。
ネパールでは、お酒やご馳走を用意して咲き誇っているサクラの木の下に集い「花見」をする習慣を見ることはありませんでした。この「花見」というのも世界に誇るべき日本独特のイベントだと思います。
英語圏の外国人に「花見」を直訳すると「Cherry blossom viewing」となりますが、「チェリーの花を見る」だけではなく日本人にとって桜っていろんな想いが込められた花だと思うのです。
まずサクラの花って、祖国を離れ生活している日本人にとってふるさとを想い出させる魔力を持っているみたいです。
冬の終わりを告げ、まず可憐な花を咲かせますがあっという間に花を潔く散らせます。風と共に花びらが散る「サクラ吹雪」も見事なもんです。そして新緑の葉っぱを枝一杯に広げ始めて、夏を越し秋を迎え、冬が来る前に色を変え葉を落とし春になるまでじっと耐えているんですね。
サクラの花が咲く頃、学校も役所の年度も四月に新年度を迎えるのは日本独特の暦です。学校に入学する新入生、学校を卒業し会社に就職する社会人一年生にも桜はスタートを告げるめでたい花であります。
年配の方には別の感情を込めて花見をなさる方もいらっしゃいます。「あぁ、今年も桜が見れた。来年も桜の季節まで長生きしたいなぁ」というポジティブな方もいれば「わしゃ、もうダメじゃ。来年の桜は見れんじゃろぅ。みおさめじゃ」というネガティブな方もいらっしゃるでしょう。
老若男女、立場の違いでサクラの花に対する想いはそれぞれ異なるようです。しかし「桜の花見」というのは、サクラの花を見て「うわぁ、きれいな花だ!」と騒ぎながら宴会するのではなく、みんないろんな想いを心に秘めて仲間と春を謳歌し「今年も一年がんばりましょう!」という意味が込められているような気がします。
英語圏で暮らす外国人に「花見」を説明するのはとっても難しいことです。日本の文化、暦(カレンダー:新学期・新年度)、四季の気候から解説しないと伝えられない風習なんです。
日本を離れてもうすぐ6年。ネパールにやって来てひさびさにサクラの花を見ることができトクした気分でひとりで花見を楽しみました。